4.抽象的思考:視座・視野
4-1.視座
4-1-2.判断
-
判断力の価値
コンテンツの図示※マウスオーバーで拡大
判断するには判断する基準が必要。
定量的な基準や規則など厳然たる根拠があれば、判断は実に簡単であり誰でもできる。
組織が規則を定める理由はここにあり、だれでも判断できるようにすることで、組織の継続性やパフォーマンスの質の安定性を確保するためにある。
一方で、それゆえに現状では、そういう厳然たる基準もなく、関係する要素・変数が多く混沌としており、どういう決定をするべきか非常に難しい=事前にどれが正解かはわからない事案に対して決定する力としての判断力が重宝される。
言い換えれば、状況を整理し、適切な成功法則を当て込むことと。
現に、今の高給取りといわれる知的産業は、本質的には「変数や要素が多く混沌とした中で、言語化し=論理化し周りを巻き込んだうえで適切と考えられる決定をする論理的判断を行う人またはそのサポートをする人」となっている。
経営者・管理職・投資家・コンサルタント・弁護士・医師等である。
一方で、経験を積み学習を帰納して判断基準を自分の中で構築し、判断する立場となることそのものについては、AIの方が人間の何倍もの量を圧倒的なスピードでこなすことができるようになるといわれている。
質については現時点では人間より劣るもののいずれ質も上回ると言われている。
そうなった場合、帰納して経験に基づいて論理的に判断すること自体すらも、AIで代替される付加価値のないものとなり下がる。
そうなった場合、帰納的思考や論理的思考のみでは太刀打ちできなくなってしまう。
その世の中においては、自身及び機械の帰納的判断を参考にしつつ、演繹的判断を行える人が重宝されるようになると思われる。
そもそも論を問い続け、この会社は何のためにあるのか、何の価値を提供するのか、と抽象的でもっとも深く根源的な領域から問を立てて、具体化していく演繹的思考力である。
ここで重要なのは、価値観や深い思考力・洞察力であり、人のココロに根差す部分である。
演繹思考は価値観から始まるため、論理のみで構成される帰納思考とは対極で一線を画すものであり、これこそが将来の世の中で重宝され、判断する際に必要になってくると思われる。
-
基盤とした名著:イマヌエル・カント『判断力批判』
名著の教えの図示※マウスオーバーで拡大
上級理性能力のひとつである判断力の統制的使用の批判を主題とする。しばしば第三批判とも呼ばれる。
第一部美的判断力の批判と第二部目的論的判断力の批判からなり、判断力に理性と感性を調和的に媒介する能力を認め、これが実践理性の象徴としての道徳的理想、神へ人間を向かわせる機縁となることを説く。
同時代の哲学や芸術理論に影響を与えただけでなく 美学、目的論、自然哲学においては現代も読まれる古典的大著である。